公開 2024年
監督 飯塚健
出演 重岡大毅、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵、間宮祥太朗、大塚明夫 他

※本記事はこの映画が好きな方はブラウザバック推奨です😢ごめんなさい※
1992年(!)に刊行された東野圭吾の同名小説を今さら映画化。なんか勢いのある若手集めてとりあえず企画してとりあえず撮りましたみたいな作品(そんなことは決してない)。
「ある閉ざされた雪の山荘で」とかいう、東野圭吾作品の中でもマイナー(かつ、撮影の予算がかからなそう)な世にも奇妙な物語みたいな話をチョイスして映像化してるあたり怪しい(何が?)。
監督は「荒川アンダー ザ ブリッジ」や「風俗行ったら人生変わったwww」の飯塚健。この人「REPLAY&DESTROY」っていうめっちゃ面白いドラマ作ってて好きだったんだけど、そういえば最近追ってませんでした。結構コンスタントに映画撮られてるようです。
以下、ネタバレ。この作品はオチが重要な話なので、未見の人はご注意!
忙しい人のためのあらすじ
人気劇団「水滸」の新作オーディションの最終選考に残った7人の男女。貸別荘に集められた彼らは主宰・東郷の指示により、貸別荘を「ある閉ざされた雪の山荘」に見たて、巻き起こる事件を解決する探偵ごっこをすることになる。1日目、2日目と1人ずつメンバーが殺害されたていで姿を消すが、本物の血とかも出てきて、だんだん「これ本当に殺されてない?」と訝しむ一同。最後の朝、3人目が姿を消し、唯一劇団の外部から選考に残っていた主人公の久我の名推理によって犯人が明かされる。彼は最終選考に残れなかった上(姿を消した3人のせいで)不慮の事故に遭い下半身付随となってしまったメンバーのために犯行に及んだのであった。しかもそいつも貸別荘に隠れていて、復讐の様子見てた。でも実際は誰も死んでなくて、本多が全員を騙してて「もっかい芝居やろうぜ!」的なアレで終幕。
忙しい人のための感想
・序盤:十角館の殺人
・中盤:名探偵だよ!重岡くん
・終盤:何を見せられてるの?
あらすじ
劇団水滸
アイマスクをさせられた6人の男女が寂れたバスに揺られている。海岸線の人けのない停留所で降りた一同は、海にテンションが上がったり上がらなかったりしながら、ほど近くにある貸別荘へ足を運んだ(このシーン、全員がアイマスクつけてたのにどうやってバス降りるの?運転手さんが降りる駅教えてくれるくらいはしてくれるにせよ、アイマスクつけたままバス降りるのって結構至難の業だろ…ってそう、謎解きはすでに始まっているのだ)。
貸別荘に先に到着していた人の良さそうな顔の男・久我(重岡大毅)は本作の主人公。久我は6人の姿を見つけると、「すげえ、すげえ」とニヤニヤしながら近づいてくる。「俺皆さんの大ファンなんです」と彼は言う。皆さんとは、この6人のことで、この6人は、界隈では有名な劇団水滸のメンバーのことだ。ご丁寧に、彼らを1人ずつフルネームで紹介してくれる久我くん。
水滸のメンバー
▫︎二枚目の役も三枚目の役もやりそうな本多(間宮祥太朗)
▫︎清楚系ギャル由梨江(西野七瀬)
▫︎ヒロインっぽい雰囲気の貴子(中条あやみ)
▫︎自分のツッコミに自信持ってそうな女こと温子(堀田真由)
▫︎オードリー春日こと雨宮(戸塚純貴)
▫︎サイコパスこと田所(岡山天音)
唯一劇団外から参加
▫︎名探偵・久我(重岡大毅)
ある閉ざされた雪の山荘で
貸別荘に入り、部屋割りを決め、荷解きを済ませリビングに集合すると、謎の技術によって劇団の主宰・東郷(CV :オール・フォー・ワン)のメッセージが天井に映し出される。いわく、ここは海岸線の優雅な貸別荘でなく山奥深くの山荘、かつ辺りは猛吹雪の「殺人事件、起きます」なクローズドサークル(の設定)であり、そこで巻き起こる事件を解決したものが主役を手にすることができるとのこと。つまり7人は劇団水滸の新作舞台オーディションを勝ち抜いた強く儚い者たちで、最終選考として擬似的な舞台の中で登場人物を演じ、役者としてあるいは人間としてどう振る舞うのかを試されてるんじゃねーの? 知らんけど。別荘の中にはたくさんのカメラが設置してあり、主宰が監視してるんですかね?知りませんけど。
あっという間に夜が更け、夕食の時間。役者業のかたわらレストランで働く久我が本格的なカレーをふるまい、劇団員一同大絶賛。温子が久我に「あなたにとって芝居とは?」と訊くと、久我は「殺し合い」と不穏な回答。変なフラグを立てる。リビングに用意された7冊の「そして誰もいなくなった」も、いい感じに不安を駆り立てる。東郷の指示でスマホが回収されていたので、7人の手持ち無沙汰になった現代人は、とりあえずそれを読みながら初日の夜を過ごすのであった。
久我が窓の外で本を読んでいると、本多が煙草を吸いにやってきたので、「本多さんに憧れてオーディションを受けたんです」と話す久我。そして、ひとつ前のオーディションで見た麻倉雅美(森川葵)という団員がなぜ落ちたのか訊いてみる。彼女のオーディションでの演技は圧倒的で、他の誰にも引けをとっていなかった。しかし本多は演出家の目に留まらなかった、俺たちが口を出すことではないとガチトーンで。…お前何か知ってるだろ!
1人目の犠牲者
温子が小説に飽きて、遊戯室?みたいな部屋でピアノを弾いていると貴子が来て、流れで温子が東郷と寝て役をゲットしているとか何とかって話になって温子のご機嫌は斜め。「逆に寝てるの?」「何の逆だよ」に飯塚健イズムを感じたシーン。
貴子が去ったあと、ピアノを弾く温子の背後に忍び寄る黒い影。ピアノにつながれたヘッドフォンの長いコードが、温子の首へひゅっと…
翌朝、唯一の相部屋で温子と同室だった由梨江が慌てた様子で階段から降りてくる。みんなで遊戯室へ行くと、温子の死体…などはなく、またもや謎の技術で天井に映し出される文字と東郷(CV:ソリッド・スネーク)の声。
事件設定
笠原温子はピアノのそばで倒れていた。
首にはヘッドフォンのコードが巻きついていたことから
考察されたと推測される。
考えろ、犯人は誰だ?
突然の殺人犯探しゲームが始まり、温子とケンカが絶えない貴子や、唯一外部の人間である久我、なんか怪しい田所に疑いがかけられていく。そしてこのあたりから、名探偵だよ!重岡くんの探偵として目が光り始める。
みんなして変なムードで朝食を食べ終えたあと、勝手口から裏庭に出る久我と貴子。裏庭には思い出したように設置された井戸があった。木の柵で囲われ、誤って落ちないよう鉄網が乗っている。久我が覗き込んでみるが、真っ暗で何も見えない。昨夜温子と揉めた内容を久我に明かした貴子は、「温子はそんなこと(枕営業)しないと信じてた」と本音を漏らした。
そのあと、遊戯室に行って殺された(ていの)温子の現場検証をする2人。色々試してたら、ヘッドフォンのコードがピアノから抜けて、あれ、このコード、さっき抜けてたっけ?挿さってたっけ?となる。さあ…それどころじゃなかったからと貴子。事件の検証しにきたんだからそれどころでしかないと思うが、ついでに温子の剥がれたネイルチップも見つけて、一応とっとく貴子。一応っていうか普通にとっとけよ。
2人目の犠牲者
夜になり、本格的過ぎて遠目からは何だかわからない料理を重い口に運ぶ一同。すると、由梨江が気まずいムードに耐えきれなくなり部屋に戻ってしまう。それを追いかける雨宮。2人の関係を匂わす感じがなんともダルい。
その日の夜、久我は本多に今晩一緒に過ごさないかと提案する。もちろんそういう意味ではない。昨夜と同じように今夜も死人が出て、それがもし久我だった場合、犯人は本多ということになるからだ。他の誰かが死んだ場合でも、本多がアリバイを証明してくれる。自分が死んだ場合の証人は由梨江に託した。が、面倒なことに田所がそれを見ていたらしく「彼女に近づくな」と言ってくる。どうやらただの嫉妬だ、バカでよかった。彼女、雨宮さんと付き合ってるだろどう見たって、と言ってみると、わかりやすく怒ったので、さっさと退散。部屋に戻って、自分の手首と本多の手首を赤い紐で結ぶ。
由梨江の部屋を訪れた田所。ドアが開くなり手で彼女の口を塞ぎ(!?)、雨宮と付き合ってるのかと尋ねる。いや、付き合ってませんと由梨江。あ、そうなんだ〜と田所は言って、笑顔で部屋を出ていく。頭がおかしい…本来おとなしくて謙虚なはずの彼女の口から「ふざけんなよ」と、つい激荒の台詞が飛び出す…かと思ったら、急に停電して、また部屋のドアがノックされる。また田所が来たのかと思った彼女は怒りのままになんか言いながらドアを開けると(あのよくある、ふざけた電話を切ったら速攻でまたかかってきて、いい加減にしろよと言いながら出るやつのドア版)、黒づくめの男が白い花瓶を振りかざして立っていた。
翌朝、久我と本多を結ぶ赤い紐は謎にハートを描いていた。映画館ならクスクス笑いが起きていたと容易に想像ができる場面である。とにかくこれで久我と本多は犯人でないことが証明された…のか?
2人が部屋を出ると、由梨江が部屋から出てこないと話題に。みんなして部屋に入ると案の定由梨江の姿はない。しかも、壁には血糊がビシャーっとなっている。そしてお約束の謎壁文字と東郷(CV:黒ひげ)。
事件設定
元村由梨江は前頭部に鈍器による打撃痕があったことから
撲殺されたと推測される
枕営業とパトロンが先にいなくなり、犯人はお前だろと貴子にけしかける田所。嫉妬はしてるけど殺したいなんて思ったことない!と貴子。この劇団員たち、ことあるごとに揉めないと気が済まない。キッチンに降りた一同は、テーブルに置かれた花瓶に本物の血がついているのを見つける。今度は最初の殺人とは違う。どうやらただの最終オーディションじゃないのかもしれないと全員が思い始める。2人は本当に殺されている可能性が微粒子レベルで存在している…?
それなら死体はどこにいったんだと本多が言ってきかないので、みんな思い出したように裏庭に出て(わざとらしい伏線回収)、井戸を覗き込む。しかしさっきと同じように中は真っ暗で死体があるかとかはわからん。でも蓋の鉄網に温子のニットの繊維が引っかかってて、貴子が戦慄して、おもむろにポッケから温子のネイルチップ出して、ピアノ弾いてて取れたら普通気づくよね?てことは本当に襲われたんだ!ヒエエ!となる。気を衒った劇団のオーディションが一気に連続殺人事件に変わり、貴子は血相変えて回収してあったスマホをとり、別荘を出ようとするが、ルールを破ったら芝居が打てなくなる。本当に殺人が起きたら東郷先生が通報するだろうという詭弁で本多が説得。いや全然説得できてない。すぐに通報しないとヴァン・ダインが怒ってくるぞ。というか東郷が犯人だったらどうするつもり?まあでも貴子もそれなりにアホなので思いとどまる。
とここで、昨晩個人的に持ち込んだビデオカメラをリビングにセットして、回しっぱなしにしておいたという久我。早速再生してみると、黒づくめの男が人を引きずる様子が映っていた。じゃあ普通に本物の殺人が起きてるじゃねえか…となる一同だが、本多だけはまだ手の込んだオーディション説を提唱し続ける。劇団を中心に世界が回っていると思っている。長瀬智也なら「仲間が死んでんだよ!血が流れてんだよ!」と叫んでいるところだ。
一旦は三々五々となったものの、荷物をまとめた雨宮が降りてきて、出て行こうとしたので一応みんなで止める。どうやら、雨宮が帰ろうとしているのには久我と本多の会話に出てきた、麻倉雅美という元メンバーが関係しているらしい。オーディションで明らかに頭ひとつ抜けていたはずの雅美は選考に落ち、失意の末に劇団を辞め実家に帰ってしまった。それを心配したメンバーが実家まで出向いたというが、その日雅美は交通事故に遭い、命は助かったものの一生車椅子の生活を余儀なくされた。
その雅美の実家を訪れたメンバーというのが温子、由梨江、雨宮の三人で、お察しの通り雨宮以外はすでに殺された2人。次の標的が自分だと悟った雨宮は殺される前に舞台から降りようとしたってわけ。しかしそうは問屋が許さない。ミステリ小説のお約束から逃げられると思うな。
結局、「俺らには役者しかない」みたいなよくわからない精神論でその場は収まり、雨宮も帰るのをやめた。視聴者はもう、どういうことだってばよ…状態。人が死んでんだけど…?
その夜、久我の部屋を訪れた貴子。壁には時効寸前の事件をまだ追いかけてる刑事くらい無数のポストイット、メンバーの写真、そして別荘の見取り図が貼られていて時効寸前の事件をまだ追いかけてる刑事やんと貴子は思った。刑事を志したきっかけの猟奇殺人事件やんと。そのあとはなんか久我に気があるっぽい貴子が「あんま人を信じないけど、あなたのことは信じるよ」だの「貴子さんの笑顔惚れちゃいますね」だの中途半端にイチャイチャして夜は更けていった。
三人目の犠牲者
最終日の朝、荷物をまとめて続々と降りてくる陰気な表情の本多、久我、田所、貴子。雨宮の姿はない。ほどなく最終オーディションの終了時間になり、また例のプロジェクター文字。
事件設定
雨宮京介はリビングで首を絞められ絞殺
そしてオーディションの終了が告げられる。事件の謎を解いたものは稽古場に来いとスネークが。
本多が芝居がかった感じで「結局俺たちは東郷さんの手の上で踊(ダンス)ってたってことか」と独りごちると、他の三人、哀れみの眼差し。田所はおもむろにビデオを再生させる。そこには、本多以外の三人が同じ部屋で夜を過ごす様子が映っていた。アリバイを作り直したんです。使わせてくれなかったから(二日目の夜一緒にアリバイを作ったのに、久我に疑いがかかった時かばってくれなかったのを根に持っている!)。
ため息をひとつついたくらいで、「はじまりは…」と犯人が聞いてもない動機とかを語るお約束のシーンを始める本多。
ざっくりまとめると、実力がありながら新作のオーディションに落ちてしまった雅美は激おこぷんぷんまるで辞めてやるーっつって実家に帰って、よせばいいのに呑気で無神経な3人組(雨宮、温子、由梨江)がドライブ旅行がてら慰めに行ったら火に油で、余計怒らせた挙句、帰りのドライブ中に温子が雅美に「雨宮が事故った」という嘘の電話をかけたところ、動揺した雅美は不注意で交通事故に遭い、前述のとおり命は助かったものの下半身不随になってしまった。どういう関係なのか知らんが(雅美が好きだった?)本多は「俺が雅美の足になる」(それ目とかで言うやつですよ)とかっつって、呑気無神経3人組(のんきか?みやすのんきか?)に殺すことにした。残念ながら当然である。
そこまで話し終えた本多に、取り乱した田所が掴みかかる。久我は落ち着け!田所落ち着けってぇー!!落ち着け!と全然落ち着いてない感じで制止し、名探偵の推理は(CMの後も)まだまだ続く。別荘にはいくつもの盗聴器が仕掛けられていた。しかし盗聴器の有効範囲はそこまで広くない。つまり、この茶番を見ていたもう1人の人物はこのすぐ近くにいる。麻倉雅美さん、そちら伺います!
事件の真相
遊戯室(温子がピアノを弾いていた部屋)にやってきた一同。久我が呼びかけると、一面鏡になっていた壁の一部が開き、車椅子の雅美が姿を現す。はじめまして、と手短に挨拶を済ませた久我。雅美はオーディションでの彼を覚えていた。最終オーディションの芝居劇という形態をとることで、みやすのんき三人組を殺害でき、かつ警察も呼ばせず逃げ出せもしないこの方法しかあり得なかった、と久我はいう。「褒められてるみたい」と雅美は言ってはにかんだ。もちろん全然褒めてない。おかげでうまくいった、と雅美。
そうでしょうか?
由梨江さんを、本多さんは殺せないんですよ。
そうだった。由梨江殺害の夜、久我と本多は赤い糸で結ばれていたのだ。ここでもう一回、ハートの形になった赤い糸が映し出されるが、ここで笑う観客は1人もいない。
共犯者がいたんですよね。いや、共演者といった方が正しいですか?
久我が「どうぞ」と誰にともなく呼びかけると、申し訳なさそうにゾロゾロ入ってくるみやすのんき3人組。本多が殺したと思っていた3人が生きてることに驚きを隠せない雅美。まあ隠す必要もないけど。どういうことだと本多に詰め寄るが、本多は黙ったまま。温子は雅美に歩み寄り、本当にごめんなさい、つって深く頭を下げる。由梨江と雨宮もそれに続く。
どういうことだってばよ…な田所に、始まる久我の探偵ショー。この、「ある閉ざされた雪の山荘で」起きた出来事は(タイトルをわざとらしく言う、探偵のお家芸だ)三重構造になっていたらしいということで。
つまりは、
第一構造:劇団水滸の主宰・東郷が考えた厨臭い最終オーディションのてい(実際に東郷は何も知らないうえ、スネークの声はAI)の、
第二構造:雅美と本多が協力して企てたみやすのんき3人組殺害計画のてい(雅美は本当に殺人が起きていると思っていた)の、
第三構造:本多とみやすのんき3人組が協力して全部を芝居にしたザ・茶番だった(4人で結託し3人が殺されたふりをしていた)のである。
久我は「最初の違和感は…」(探偵お家芸その②)つって、温子の事件の時に電子ピアノに繋がったヘッドフォンのコードが挿しっぱなしだったことを指摘。普通は人を殺せるほどコードを引っ張ったらプラグは抜けるはずだと。そうでしょうか? コードが長くて気をつけたら抜けない気もするが…。しかし久我と貴子が現場検証をしに訪れたとき、プラグは抜けていた。つまりそのとき同じことを思った本多が後でこっそりプラグを抜いちゃったもんだから、名探偵君に大ヒントを与えることになったと。さすがに爪が甘すぎるよ本多くん。
本多が久我と紐で繋がれていた夜に由梨江を殺害することができたのは、雨宮が本田の代役として犯人を演じたからである。そう、アドリブで。あの夜に起きた停電は、犯人役が代わったことを監視カメラの映像を見る雅美に知られないためであった。
見せられていた殺人劇が本多の大芝居だったことを知り、取り乱したふりをした雅美はおもむろにナイフを取り出し、死ぬ気もないのに「さよなら」とか言って刃を振りかざす。それをもちろん本多が止める。刃が当たって血が出る。
お前に生きろなんて簡単に言えない。でも、生きろ(言わないとは言っていない)
たたみかけるように久我がオーディションで見た雅美さんが凄かったみたいな話して、貴子やみやすのんき3人組ものんきを捨てて、また一緒に芝居しようっつって、田所が「最悪と言えるうちは、まだ最悪じゃない」つって、みんなで励まして、んで本多が「芝居は生かし合いだ。殺し合いなんかじゃない(キリッ)」って締めたら、雅美が「特殊な役しかできないなあ」つって、わかってくれたっぽくて、いつの間にかみんな舞台の上にいて、衣装っぽい衣装着てて、久我もいて、観客の拍手と歓声が鳴り響いてたわけで…父さん…
カーテンコールへ出ていった水滸の一同が順番に映し出されてエンドクレジット。
登場人物
久我和幸(重岡大毅)
劇団水滸の新作オーディションで唯一外部から最終選考に残った候補者にして、劇団水滸のシンプルファンにして、本作の主人公にして、探偵役。以前はマイナー劇団に所属していたが、解散し現在はフリー。俳優業のかたわら、レストランでシェフとして働き生計を立てている。滞在中の食事はすべて彼が担当。主人公補正の恐るべき探偵の勘でわずかな手がかりから事件の全貌を解き明かす。
水滸のオーディションは記念受験で、その前に受けたオーディションは軒並み落ちていたらしい。にもかかかわらず水滸のオーディションは最終選考まで残るという。雅美を差し置いてである。東郷が(探偵役としての)才能を見抜いたのか、雅美が裸の王様であったのかは謎。
中西貴子(中条あやみ)
一応本作のヒロイン的な立ち位置。ちょっと久我に惹かれている節がある。笠原温子とは仲がいい反面対立することもよくある。劇中では久我と行動を共にすることが多いが、ヘッドフォンのプラグも全然見てないなどワトソン的な役回りもないし本多と愉快な仲間たちでもない実質的には何もしていない人物。アホ。
田所義雄(岡山天音)
おかっぱ頭で、狂気の演技に定評がありそうな水滸のメンバー。同い年だからとタメ語を使った久我に苦言を呈すなど性格に少し難がある。そのくせ、想いを寄せる元村由梨江に対しては申し訳程度のアプローチしかできない上に、挙動不審でストーカーチックになっている。かと思えば雅美が実家に帰った時安易にのんき組に入ったりしないなど常識人な面もある。特技はモノマネ。
元村由梨江(西野七瀬)
劇団水滸のアイドル女優。実家が金持ちで、父親が劇団のパトロンであるためわりと優遇されている。でもそれを自覚しているタイプのお嬢様で、同じ坂道系のアガサみたいにヒステリックでもない。麻倉雅美が退団した際、雨宮と笠原とともに彼女の実家を訪れた。雨宮と恋愛関係にある描写があるが真偽は不明(本人は否定)。2日目の夜、部屋に入ってきた黒づくめの男に花瓶で頭を殴られ離脱。
笠原温子(堀田真由)
虚無主義っぽい表情に定評がある水滸のメンバー。食事の席ではとかく演技論や役者について話したいタイプの俗物。主宰と肉体関係を持つことで役を手にしているとたびたび噂される。真偽は不明(本人は否定したりしなかったり)。麻倉雅美の実家を訪れた際、ひとしきり揉めて帰ったあと、面白半分で雅美に雨宮が車で事故ったという狂言電話をかける。ガチの戦犯。初日の夜に遊戯室で電子ピアノを弾いているところをヘッドフォンのコードで首を絞められて離脱。
雨宮恭介(戸塚純貴)
髪型がヒカルの碁な水滸のメンバー。貸別荘では特に何もしていないし、雅美の実家でも女の喧嘩に巻き込まれてぶっ倒れてただけだったが、由梨江や雅美に好意を寄せられており普段はいい男のようである。まあイケメンだし。雅美凸メンバー2人が先に姿を消し、次のターゲットが自分であると思い一度は「殺人鬼がいる場所にこれ以上いられるか!俺は降りる!」と帰ろうとするが本多の説得によりフラグを回避する。
麻倉雅美(森川葵)
劇団水滸の元メンバーで、事件の一段階目の首謀者。喋り方が常に演劇くさい。新作オーディションの選考に落ち(父親が劇団のスポンサーである由梨江や主宰と肉体関係にある温子がいたからかどうかは不明、小説では演技は上手いが見た目に華がない設定)、劇団を辞め実家に帰ったら3人が慰めに来て、何がやねんと突き返したら温子から「雨宮が事故った」と電話が来て動揺、不注意で車に轢かれ下半身付随となる。それ以降3人に並々ならぬ恨みを募らせ(残当)、本多に殺害計画を持ちかける。
本多雄一(間宮祥太朗)
劇団水滸の看板俳優。選考に残った中ではまともな性格の持ち主で、冷静な判断力を持つ。喫煙者。事件の二段階目の首謀者で、雅美から3人への復讐を懇願され、今回の貸別荘での擬似殺人を計画。3人に台本を渡し、監視カメラの映像を見る雅美には実際に殺害しているように見えるよう演技した。
東郷陣平(CV:大塚明夫)
劇団水滸の主宰・演出家。この事件に一切関わっていない人。別荘内で流れる声は彼のものだが、実際にはAIで作成されたものなので何の関係もない。由梨江や温子といった人選にまつわる噂も基本的には真偽不明だが、最後に久我の脚本を採用したのはこの映画においての彼の功績である。
感想
邦画はながら見ができるので気楽に見始めることが多いですが、たまに面白い映画に会うと嬉しくなるものです。しかし本作は残念ながら、ながら見がふさわしい映画です(泣)。
とは言っても、劇団の一員でもない久我が急に最終選考に残って、バリバリの最前線で推理を始めるのシュールでめっちゃおもろかったな。趣味で探偵をやっている人ですか?っていう。
オーディションの舞台設定を使ってクローズドサークルを作るという発想自体は面白いものの、その辻褄を合わせるがために、久我の勘が異様に良すぎるとか、AI東郷のクオリティが高すぎるとか、人が死んでるのにかたくなに通報しないとか、遊戯室の鏡はいかにも開きそうとか、温子があまりにも戦犯すぎるとか、ツッコミどころが満載になってしまったのが残念ではある。
あと大根仁とか堤幸彦とかでもありがちなのが、普段コメディを撮ってる監督がシリアスな映画を撮った時の、たまに出るギャグシーンが薄ら寒くなる現象、あれなんですか?あれがクロノスタシスですか?
この映画の良かったところかあ。何だろ。田所が久我を徐々に認めていくところかな…?
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