全話ネタバレ|『アドレセンス』とかいう激重版「カメラを止めるな!」

海外ドラマ

Adolescence

公開 2025年 イギリス Netflix限定

監督 フィリップ・バランティーニ

出演 オーウェン・クーパー、スティーヴン・グレアム、アメリー・ピース、クリスティン・トレマルコ、アシュリー・ウォルターズ、フェイ・マーセイ 他

中学生の男の子がなんの前触れもなくある朝急に殺人容疑で逮捕されて、家族やら学校やら警察やらが大騒ぎ!

何かと物議を醸したり醸さなかったりしたイギリスのネトフリ限定ドラマ。1話1時間の全4話構成。まるまる1話がワンカット撮影という演出でも話題になったりならなかったりした。

ネトフリが散々勧めてきたのと、向里祐香さんがインスタで「いいドラマ」って言ってたので観てみたやつ。作った人は一体何を伝えたかったのか、別に伝えたいとかはなくてただ作った作品なのか、いちいちこっちに考えさせてくるタイプの、意識高い系ドラマ。決して面白くはない気がするけど、なんか最後まで観てしまった。

何だよこのサムネ。以下ネタバレ。

あらすじ

第1話

黒人警察官ルーク(アシュリー・ウォルターズ)と女性警察官ミーシャ(フェイ・マーセイ)は大勢の機動隊を率い、これでもかっていう猛烈な勢いでもってとある家に突入する。住人の家族が寝耳に水といった様子で「違う家と間違えてる」と狼狽する中、二階にいた13歳の長男ジェイミー(オーウェン・クーパー)がルークによって逮捕される。容疑は殺人。

ドアを壊され家の中も荒らされてパニックに陥るジェイミーの父と母、そして姉だったが、とりま警察に行って手続きだの何だの済まさないことには埒があかない。何につけても手続きの時代なのだ。よくわからんがジェイミーの「適切な大人」とやらになった父エディ(スティーヴン・グレアム)は、無料の弁護士ポール(マーク・スタンリー)とともに、ジェイミーの取り調べに同席することになる。昨夜(事件のあった夜)のことは話さないようにとポールと打ち合わせをしたあと、2人になったエディとジェイミーは「信じていいんだな?息子よ」「うん、パパ」と言葉を交わした。

逮捕時から「え?僕何もやってないけど?」「マジで何?」とばかりに容疑を否認していたジェイミー。しかし、ルークたちによる取り調べでインスタでインフルエンサー女性に粘着コメしていたことや、殺害されたというジェイミーと同じ学校に通うJC・ケイティ(エミリア・ホリデイ)を事件の夜に尾行していたことが次々と明らかになり、さらにダメ押しで監視カメラに映ったケイティをメッタ刺しにするジェイミーの映像を見せられる。これにはポールもエディも視聴者も「ほなジェイミーやないかい」となる。「俺が信じていいんだな?って言った時どう思てたんやお前」である。超バッドミルクボーイとなってしまった2人はその場で一緒に泣く。

第2話

ジェイミーの通う学校。事件当夜も一緒にいたというジェイミーのいつメン・ライアンとトミーがコソコソ何か話している。事件から三日後、刑事のルークとミーシャはまだ見つかっていない凶器の在りかと凶行の動機を探るため学校を訪れていた。被害者ケイティの親友・ジェイドと話をしたが、ブチギレ過ぎて会話にならない。ルークとミーシャは各教室に「何か知っていることがあれば教えてくれ」と言って回った。朝礼で全校生徒が集まった際、ジェイドがライアンに殴りかかったので、どしたん話聞こかとルーク。ライアンと当たり障りのない言葉を交わすが、最終的に走って逃げ出したのでとっ捕まえて詰め寄ったら、殺害に使われたナイフはライアンがジェイミーに頼まれて貸したもので、脅しに使うものだと思っていたという。ルークはライアンを共謀罪で逮捕した。

ちな、その学校にはルークの息子アダムも通っていて、若干いじめられていた。そのアダムが「父さんは何もわかってない。話がある」というので何かと思ったら、

ジェイミーのインスタにケイティがコメントしてただろ?仲良くもないのに何でコメントするんだ、本当は何か関係があったんだろと父さんは思った?違う違う、あれはいじめだよ父さん。あのハートマークは愛情表現なんかじゃない。「弱者男性」「素人童貞」って意味だ。

そ、そうなの?

第3話

法廷心理学者・ブリオニーは裁判の判決前報告書を書くため、(ココアとサンドイッチの差し入れを持って)何度目かの面会にジェイミーを訪れていた。収容施設で裁判を待つジェイミーは、逮捕時の様子からは想像もできないほど普通の男子中学生に戻っており、序盤の会話では家族のモノマネも飛び出すほど。しかし家族の世間話から父親の話になり、そこから「男らしさ」だの「自分が男であること」だの変な話題になると、次第に顔が曇りはじめるジェイミー。ジェイミー的にはブリオニーは話し相手で、カウンセラーのように接していたが、実際はそうではない。ブリオニーは敵でもないが味方でもない。ジェイミーはサッカーの試合でミスして父親の方を見た際目をそらされたという過去を告白する。自分が情けない息子だから、落胆した顔を見られたくなかったんだと。その時どう思った? とブリオニーが訊くと、「否定しないの?」とジェイミー。ていうか何で僕はこんなところにいるの? ライアンは自宅で待ってるのに。ここどこ? 精神病院? そもそも何の罪に問われてるの? バカなの? 死ぬの? ヒートアップして立ち上がるジェイミーに「座って」と言うブリオニー。すると

「いつ座るかを指図するな!」とココアをバーン!!

とジェイミーがブチギレたので、一旦休憩して(一旦昼寝して)仕切り直し。今度は性についてや被害者のケイティについて質問するブリオニー。ジェイミーいわくケイティは好きぴにおっぱいの写真を送ったが、好きぴにそのおっぱい写真をSNSで拡散されるという、Xでたまに見るやつの逆パターンという珍しい目に遭ってしまったという。ケイティが傷つき、今ならイケると思ったジェイミーは、彼女をデートに誘うが、「そこまで必死じゃない」と笑われる。それ以来、ケイティはジェイミーのインスタに「弱者男性」を意味する絵文字を書き込むようになる。ケイティってひどい女だろ?でも僕はあの日彼女に触れたけど触らなかったんだ。僕はナイフを持ってて彼女は怖がってたからどこにでも触れたのにね。触らなかったことを褒めてほしいくらいだよ。あーっブリオニーの目が死んでる!彼女はインスピレーションが働くと目つきが死ぬんだ!この特徴からブリオニーは別名「大丈夫?」と呼ばれている!この死んだ目から逃れられる者は誰もいないんだ!

面会はこれが最後と言われて取り乱したジェイミーは「嫌だ!先生は僕のこと好き!?」と喚き散らし、「パパに伝えて!僕は元気だって!!」と言いながらルークに引っ張られブリオニーの視界から消えていく。ブリオニーの目からは今まで耐えていたかのように涙がひと筋流れ落ちる。ブリオニーは恐怖を感じると目から涙を流すのだ。この特徴からブリオニーは「泣いてる?大丈夫?」と呼ばれている。

第4話

13ヶ月後。1年も経つと、さすがに家族は以前のような普通の毎日を送っていた。長男が収容施設にいること以外は。その日は父・エディの誕生日で、朝食の準備をする母マンダにエディが朝からあっちのお誘いをしていると、長女リサが慌てた様子で「車見た?」とキッチンに入ってくる。エディが見にいくと、会社の車でもある黒いバンの窓に小児性犯罪者を意味する「NONSE(ノンス)」という文字が黄色いスプレーで書かれていた。エディは血相を変えてスポンジで消そうとするが、びっくりするぐらい消えない。びっくりするぐらい消えないのに、怒りすぎて「え?消えてないよね?」と思わせるほど表情を変えないエディ。「クソッ、消えない」とか言えよ。さらに通りすがりのチャリの若者2人が「やーいノンス!」と言ってきて、エディの怒りゲージはどんどんHighに。それでも一家は父親の誕生日を取り戻すべく、激落ちくんを買いにデカめのダイソーに向かう。行きの車の中で、落書きを消したら映画でも観て中華料理でも食べに行こうと計画する3人。店に着きエディが店員に声をかけると、奇跡的にジェイミーの父親だと気付かれ、「僕は味方です。息子さんは無実だ。良い弁護士を雇うべき」と励まされる。完全に消すには再塗装が必要だと言われ、塗料を購入し何とも言えない気持ちで店をあとにすると、駐車場でさっきのチャリの若者2人を発見。一気に頭に血が上ったエディは1人の胸ぐらを掴み、「二度とするなクソガキ」と凄んで投げ飛ばす。ついでにチャリも投げ飛ばす。少年たちが逃げ帰ったあと、エディは怒りゲージMAXの勢いで塗料の蓋を開け、車にバシャーンとやる。警備員に「片付けろ」と言われるも、エディは「黙れアホ!さっさと店に引っ込め!」とものすごい剣幕で怒鳴り、車を発進させる。帰り道、沈黙する家族に電話の着信音が流れる。ジェイミーだ。車のスピーカーから流れるジェイミーの声はいつもと同じで、「パパ、誕生日おめでとう」と言った。

こっちはまあ普通にやってるよ、相談できる人もいるし。あのさパパ、今日言うのもあれだけど、僕は容疑を認める。ついさっき決めた。

それまでエディだけが話をしていたが、マンダとリサも口を開き、何気ない会話をした。「パパ本当にごめんね。誕生日おめでとう」とジェイミーは言った。エディが何か言う前に電話は切れた。施設には電話を使いたい人がたくさんいる。

自分たちの何が間違っていたのだろうか。エディとマンダは話し合うが、答えは出ない。これから、自分たちにもっとできたはずの何かを考え続けることがきっと大事なのだと、そう結論づけたところで、誕生日をやり直す気満々のリサが「ママが買った服?いいじゃん。チャリのあいつらは知り合いなんだけど(知り合いなんかい!)、ガチのアホだから。引っ越したってどうせ噂はすぐに広まるんだから同じだし、引っ越さないよ。ジェイミーは私たちの家族でしょ?映画に行くのはやめて、まずは朝ごはんを食べよう」。ぐう聖。2人がキッチンに降りると、エディは1人ジェイミーの部屋に入り、彼の枕に突っ伏して咽び泣いた。そしてクマのぬいぐるみに布団をかけ、額にキスをした。

「ごめんな。パパの力不足だ」

感想

決して面白くはないとか言ったけど、この記事を書くためにちょっと観なおしてみたら結構よかったですね。まあ何をもってして“いい”のかっていう話ではあるけれども。

ケイティを殺したのは誰なのか

まずこのドラマ、いきなりジェイミーが逮捕されるところから始まるので、1話を一体誰の目線になって見るんだいっていうとやっぱジェイミーの目線ですよと。

「何で自分が逮捕されるのか。何かの間違いだ」っていう。

んでさらに普段から映画を見てる人だと、ここで「こんな普通の家のこんな普通の少年が殺人犯のはずがない。本当の犯人がいて、何かの策略でこの子は逮捕されたんだ」って思うとなく思わされる。

ってとこが出発点で、1話はいわば一体真犯人は誰なんだろうワクワク、の、段!って感じ。

そこにワンカット撮影という演出要素(てか事前に知ってたから意識して観れたけど、知らなかったら気づくのか?果たして)の視覚的な面白さと、ふうん未成年が逮捕されたらこういうふうに手続きが進んでいくのか、っていう単純な知識欲が満たされ、とりあえずは1時間が過ぎて、最後にジェイミーがケイティを殺害する監視カメラの映像が出てきて、「いやお前が犯人なんかい!」ってなるという。

あと、1時間という間をもたすにはあまりにもちょうどいい役者さんたちの自然な演技。ジェイミー役の子はちゃんとした仕事の演技が初めてだそうで。恐ろしいですね。

展開早押しクイズ

んで、2話3話と観ていくわけだけど、俺らの中では「本当にジェイミーが犯人なの?」ってかすかに思ってんだよまだ。

いや最近はディープフェイクとかもあるし、さぞかし驚きの結末が待ってるんでしょうね…?って思ってるわけ。そうであってほしいと思ってるわけ。

でもだんだん、ジェイミーの友達がナイフ貸したとか、心理学者に対するジェイミーの態度とか見て「あっ、そういう感じね」ってなるわけ。

もう早押しクイズなのよこうなってくると。早い人は1話の「ケイティがジェイミーと仲良いとかでもないのインスタにコメントしてる」ってとこで押してんだよね。ピンポーン!つって。俺らとかは3話でジェイミーがキレるまでボタン押さずに様子見ちゃうから。

それでも、生きていく

4話になって、ドラマの見方が180°変わる。だってもうジェイミーが犯人なことは確定だから。ジェイミーが出てくるの声だけだし。

ここ、観直した時の方が良かったですね。やっぱ最初に観た時は、ちょっと「何だ普通にジェイミーが犯人なのか、つまらんな」と思ってしまってたというか。思ってたのと違う展開になったことでがっかりしたのもあったのかもしれない。

でも家族が殺人容疑で逮捕されて1年経って、懸命に普通の暮らしを取り戻そうとするミラー一家の振る舞いを見てると、「もし自分が彼らと同じ立場だったら」と考えて胸が痛いし、想像もしたくないけど、後悔しないように生きるにはとか、大切な人のためにどうあればいいのかとか、そういう普段は考えないようなことを考えられるいいドラマだなあと思いました普通に。

てかリサがいい子すぎて泣いたな〜

ジェイミーの電話のあと家に帰って普通に誕生日やろうとしてくれるの優しいわ。エディは店の人にまでキレ散らかして普通なら嫌いになるレベルなのに、お母さんもリサもエディの着替えた服褒めるの優しすぎた。

心の中に持たされたハープ

劇中のジェイミーは、どこか罪の意識というか、1人の人間を殺したということの重さがいまいちわかっていないように見えます。

この手の、イノセントな殺人犯を映画とかで見るたび、「GOLD」という昔のドラマの心琴の話を思い出す。

天海祐希演じる女社長が刑務所の慰問に訪れた際、多くの収監者たちを前に優しく話し始めるものの、心に持たされたハープの弦が悪事に手を染めるたび一本ずつ切れていき、最終的にすべての弦を失った者、それがあなたたちよと語気を強めていく。どよめく収監者たちも意に介さず、最後には「あなたはけだもの」だと断ずる。

果たしてジェイミーはけだものだったのだろうか?

ミラー家の人たちは可哀想だ。誰も悪くないと思う。でもジェイミーは生きていて、ケイティは死んだ。もちろんケイティにも家族がいたし、友達だっていた。ケイティだって悪いところはあったが、殺されるほどではない。

エディたちにできたことはもっとあったかもしれない。でも間接的にケイティを殺したと弾劾されるほどでもない。大事な人が罪を犯した苦しみと残された者の苦しみ。こういうとき、人はとっさに天秤にかけようとしてしまう。しかし、いくら天秤にかけても何がどうなることはない。ただどちらかが重いか軽いかわかるだけだ。

マンダが言っていたように、私たちに何ができるか考えるのが大事なのだと思う。ハープの弦が切れぬよう、慎重に。

まとめ

『アドレセンス』、なんだかんだ話題になってるだけあって見応えのあるドラマだった。

1時間×4話でそんなに長尺でもないし、気軽に見れるのでスキマ時間にぜひ観てみてください〜

じゃあね〜

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